脳梗塞は脳の血管が詰まって神経細胞が壊死する病気

脳動脈が閉塞して血液が届かないため、脳の神経細胞が必要とする酸素やブドウ糖が不足して壊死してしまう状態が「脳梗塞」です。脳の太い動脈の動脈硬化が原因で起こる「アテローム血栓性脳梗塞」、脳の奥に入り込む細い動脈の変性で起きる「ラクナ梗塞」などに分類されます。

TIAが起きたら救急搬送

脳梗塞とは?
脳に酸素と栄養を供給している血管が詰まることによって起こる病気です。血流が途絶えると、詰まった部分から先の脳細胞が壊死し、運動、言語、感覚に障害が現れます。

アテローム血栓性脳梗塞
脳の太い動脈や、脳に血液を運んでいる、首の太い動脈(頚動脈)の動脈硬化が原因で起こります。高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病が大きな危険因子となります。

ラクナ梗塞(隠れ脳梗塞)
細い動脈に生じる脳梗塞で、高血圧の人に多いタイプです。高血圧などで、細い動脈に強い圧力がかかり続けると、血管壁が痛み、徐々に厚くなってきます。すると、血管の内腔が狭くなり、最終的に詰まってしまうのです。

脳ドックで発見される「隠れ脳梗塞」はこのラクナ梗塞を指します。自覚症状が全く現れないことがあるため、知らないうちに脳のあちこちに梗塞を起こして、認知機能障害につながるリスクがあります。

心原性脳塞栓症
長嶋茂雄さんが倒れた原因はこのタイプです。不整脈の一種である心房細動などで心臓内にできた血栓が、血流にのって脳の動脈を詰まらせるのが心原性脳塞栓症です。重症になるケースも少なくありません。

脳梗塞の前兆:TIA(一過性脳虚血発作)
脳梗塞の一時的に起こる発作をTIA(一過性脳虚血発作)といいます。めまい、視野障害、痺れ、言語障害などの症状が現れますが、数分〜数十分で回復することがほとんどです。

t-PAによる血栓溶解療法
t-PAは2005年に脳梗塞への健康保険適用が認められた、比較的新しい薬です。血栓を溶かす力が非常に強く、注射と点滴で投与されます。脳梗塞の発症後4.5時間以内の使用で後遺症を大幅に軽減することが可能です。

脳保護療法
エダラボン(商品名:ラジカット)という薬を使って、脳細胞を破壊するフリーラジカル(活性酸素)を除去し、脳の障害を防ぐことにより、脳梗塞の後遺症を軽くしようというものです。

抗血小板療法
脳梗塞の再発予防のために、薬を使って血小板が集まるのを抑える治療を行います。これが抗血小板療法で、アスピリンが標準的な治療薬として広く使われています。

抗凝固療法
血栓をつくるフィブリンの働きを抑制して、心原性脳塞栓症の再発を予防しようという治療法です。血栓ができにくくするワーファリン、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースという抗凝固薬が用いられます。

脳梗塞が起こりやすい時間帯、場所、季節とは?

脳梗塞の発作がどんな時間帯に起きる傾向にあるか調べたところ、最も危険なのが睡眠中となっており、脳梗塞の約40%は睡眠中に起こるとされています。次いで起床時が危険な時間帯です。

睡眠中の発症率が高くなるのは、血圧の変動や脱水が脳梗塞のきっかけとなることが多いためで、睡眠中は汗で水分が失われて脱水が起こりやすく、血圧も低下するため血栓ができやすくなるからです。

脳梗塞のなかでも、脳の細い血管に血栓が詰まる「ラクナ梗塞」、太い動脈の血管が詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」は特に睡眠中に発症しやすく、一方、心臓で作られた血栓が脳へ運ばれて血管を詰まらせる「心原性脳塞栓症」は起床から2時間以内の発症リスクが高くなっています。

脳梗塞が睡眠中や起床時に起こりやすいということは、自宅にいる時に発作がやってくるということです。寝室以外の場所として気をつけたいのは、浴室や脱衣所、玄関先です。

浴室のリスクが高いのは、入浴中は発汗のため睡眠時以上の水分が短時間で失われてしまうからです。脱衣所や玄関先は、気温の低い冬などに浴室→脱衣所、屋内→玄関先の移動によって急激な温度変化の影響で血管が一気に収縮し、血流が悪くなり、血管を詰まらせる「血栓」ができやすいためです。

厚生労働省の調査によると、脳梗塞の起きやすい季節は、気温の上昇による発汗で脱水症状が起きやすい夏が最もリスクが高いとされ、次いで秋、冬、春の順番になっています。

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